君色のソナチネ
「本当に恋すると、その相手は自分にとって、何とも比べられない存在になると思うの。かけがえのない存在、いない事が考えられない存在。
その人がいなくなった時のことなんて考えるだけ無駄。でも、もしもいなくなったら、たぶん生き方が分からなくなってるんじゃないかな。
それこそ、さっき比べるなんて愚問だっていってたけれど、敢えて比べるとしたららヴァイオリンと同じくらい、大切な存在だってこと。
そんな存在が、純怜にも現れる可能性があるんだよ。」
「…うん。」
結局のところ、華菜は私に何を言いたいの?
「でも、恋と、音楽は決して交わらないから。
どちらも本気で向き合っていたら、それぞれの領域を脅かすなんてこと絶対にない。
大切なモノが2つもあることは、結局はどっちかを疎かにするんだって思われがち。だけど、そんな事、ないと思うなぁ。
それで悩んでるんだったら、純怜もまだまだだねっ‼︎」
「なんでよ。」
「え?だって、そんな事が起こり得るとしたら、どっちも中途半端な気持ちしか無かったってことだよ。
でも、純怜がピアノに対して中途半端だとか絶対に思えないし。
まぁ、あとは、純怜がどのくらい本気で恋できるかだけど?
…でも、それも心配いらないと思うわ。
か、み、ね、く、ん、となら。」
「ーッ‼︎」
「恋は、音楽は、それぞれの世界で生きている。
それに、音楽をやってきた先人たちにも恋をした人達がいるわ。
だから、純怜、安心して''恋''しなさい‼︎」