君色のソナチネ
ーーーそれから2日後の今日、月曜日。
文化祭も今週の土日に迫ってきた。
いつも通り、クラスごとに振り分けられた時間を使って、ホールでミュージカルの練習をしてたんだけど、
私、絶好調みたいです。
だってほら、
「純怜、急にどうしたの‼︎
凄く演技上手になってる‼︎」
ね?
この前まで、私と神峰は、皆さんにほとほと呆れられていたんですよ。
頬杖ついて見られてたんですよ。
なのに、こうやって、あっちゃんが目を輝かせて言ってくるってことは、私絶好調だよね?うん!
自分の気持ちに気付いてからというもの、見るもの全てが色付き始めたんだ‼︎
ついに、私の時代がやってきた〜‼︎
「きらきらぁ〜‼︎」
「パコンっ‼︎」
「い''ったぁっ‼︎
いきなり何すんのよ!」
幸せに浸っていた私を、簡単に現実の世界へ連れ戻す奴はあいつしかいない‼︎
文句を言ってやろうと思って振り向くと、
「うわぁ!ち、近い‼︎」
上から見下ろされている。
「きらきらぁって口にだすなよ、真剣にやってんのに気が抜ける。」
嘘っ、口にでてた?
「それはそれは、失礼しました〜」
決して適当に謝ったわけじゃないの。
でも、距離が近くて、ちょっとビックリしちゃって、素っ気なくなってしまったかな。
なのに、そんな私の気持ちも露知らず。
「お前、謝る気ねぇだろ。」
そう言って神峰は、私の顔を覗き込むようにかがんで目線を合わせてきた。
っていうより睨んでる?
「ゔっ、だから近いってばっ!」
あんたが近くにいるってだけで意識しちゃうんだから、近づきすぎないで頂きたい。いや、もっと近づいてほしいな〜、なんちゃって。
もう、どっちがいいのか自分でも分かんなくなってる。
なのに、
「お前が真剣に謝ったら離れてやる。」
え?え?え?
あの〜私今、慣れないこの状況にドキドキしすぎて声が出てこないんですよね。
なのに、この状況で謝らないなら離れないと?
うん、じゃあ惜しいけど、逃げる。
逃げさせてもらいます。
そう思って向きを変えて一歩を踏み出した瞬間、
「パシッ」
え?