君色のソナチネ
泣きじゃくる私の背中をポンポンしながら、神峰は抱き寄せてくれる。
''お前の顔、ますます酷くなってるぞ''なんて言いながら。
3月の終わりといっても、夕方になると冷える。
寒い筈なのに、ずっと、私の心も身体も温めようとしてくれるんだ。
そんな彼の優しさに触れていると、いつしか''嫌われるんじゃないか''という不安も消え去って、気持ちが落ち着いてきた。
「落ち着いたか?
ここじゃお前風邪ひくだろ。
取り敢えず練習室にでもいくか。」
''教室''に帰ると言わないところにも、彼の優しさを感じて、心がホッとした暖かさに包まれる。
「うん。」
まだ後悔とか罪悪感とかはたっぷり残っているのになぁ、なんて思うけれどやっぱり、神峰の存在って私の中では絶大で。
でもそんな神峰は、学園では、相園先輩に匹敵するって言われてる王子様。
こうして一緒にいると、勘違いしてしまいそうになる。
私に向けてくれるその笑顔や優しさは特別なんじゃないかって。
でも、ちゃんと分かってるよ。
神峰はみんなに優しいんだ。
私だけに向けられてるわけではないし、私が彼の笑顔や優しさを独り占めしていいわけもない。
ちゃんとそこのところ、わきまえてるんだ。
でも、少しだけ欲を言わせてください。
もう少しだけ、文化祭が終わるまで、彼の隣ににいてもいいですよね、神様?ーーーーー