君色のソナチネ
「純怜には、ミュージカルの役と、実行委員の仕事に集中してもらいたかったんだって。
みんなも、純怜には、大切な主役を演じきってもらわなきゃならないから、それに賛成したのよ。」
えっ、でも、
「一言言ってくれてもよかったじゃん。」
「一言でもいってみなさいよ。
あんたは''皆んなだけに任せるのは申し訳ない''とかなんとか言って、絶対1人で頑張ろうとするでしょ。
どんなに忙しくても、純怜は全部やろうとするし、実際、やりこなすじゃない。無理してでも。」
うぅ、
「それに、忙しすぎて今まで2日目のこと、忘れてたんでしょ?」
確かに。
「だから、ミュージカルの本番が終わるまで、もしくは、あんたが2日目の事に気がつくまで、私達だけでやろうって、決めたのよ。
純怜と神峰君が実行委員でいない時とか、2人だけでミュージカルの練習やってた時とかに、ここに来て準備してたの。」
みんな…。
「みんなだって、大変なのに…。」
「何言ってんのよ!
純怜の方が何倍も大変なのよ‼︎
あんたは体調崩すまで、いや、崩しながらでも最後までやるんだから。
ミュージカルの主役に選んだのは私達なんだけど。
…だから、少しくらいは私たちにもやらせなさいよ。」
そう言って、にこっと微笑む華菜。
みんなも''そうだそうだー‼︎''なんて言って笑ってる。
「さぁ、今日も、もう少しがんばろーよみんなー‼︎」
樹音がそうみんなに声をかけると、みんなは、それぞれ作っていたものの作業に取り掛かる。
あぁ、友達ってなんて素敵なんだろう。
友達っていう存在はすごく心強い。
作業をしているみんなを見ていると、そう思わずにはいられなくて、
「みんな‼︎ほんっとうに、ありがとうっ‼︎」
ガバッて頭をさげて叫ぶと、みんなは、''お互い様だよ〜‼︎''なんて言って、笑ってる。
私も思わず笑顔になる。
「本番は今からだよ!まだぜんっぜん間に合ってないんだから‼︎急ピッチで進めなきゃ!ミュージカル、だいぶ様になってきたんだし、純怜にもバンバン手伝ってもらうからね‼︎」
あっちゃんが、そう言う。
「うん、もちろんだよっ‼︎」
私だって、みんなと頑張りたいしね。
そう思っていると、
「神峰君に1番感謝しなさいよ。
神峰君が影で企画からいろいろしてたんだからね。あんたの分も。」
華菜が私のところにきて、こっそりと教えてくれた。
そうだったんだ。
「…うん。」
返事をすると、何故かニヤッと笑う華菜。
なんだか、やな予感。
「ねぇ、純怜と神峰君、ちょっと買い出し頼まれてくれない?
接着剤とテープ、それに絵の具。」
そういって、華菜は、意味ありげな表情を私に向けてきた。
「今日はそのまま帰っていいからさ、明日もってきてよ。」
そういって、私の背中を''はいはいっ''と叩きながら、あっという間に廊下に出された。
同じくして神峰も。
みんなの''ばいばーいっ、また明日ね〜‼︎''なんて声が後ろから聞こえてくる。
「あはははは〜…、、。」
笑うしかないよね。
「フッ。」
神峰だってほら、笑ってる。
元気がいいのだか、押しが強いのだか、華菜ってちょっと強引なところもあるんだなぁ〜なんて思いながら、予備室を後にした。