君色のソナチネ
もうそろそろ今日はお別れかなんて思いながら家の前までやってきたとき、しゃがみ込んでるばあちゃんを見つけた。
「あれ?ばあちゃん?
なにやってんのー?」
「あら、おかえり、純怜ちゃん。
この辺、最近汚れていたでしょ。
雨降っていてなかなか掃除もできなかったから、今やっておこうかしらと思ってやっていたのよ。」
「もう暗いのに。」
「暗かったらやってはいけないの?」
キョトンとした顔でみてくるばあちゃん。
天然だ。
「いや、そうじゃないけど、暗くて見えにくいんじゃない?」
というか、汚れなんて見えないじゃん、暗すぎて。
「大丈夫よ〜‼︎
テーブルの上に夜ご飯置いてるから、じいちゃんと先に食べてなさい。
私もすぐにいくわ。」
大丈夫…なんだ…。
「気をつけてね、ばあちゃん!」
ほんとに、気をつけてよ、もうばあちゃんも歳なんだからさ。
私と違って外見はすごく若くて綺麗だけど。
いっつも思うけど、私って、なんでばあちゃんの遺伝子、引き継がなかったのかなぁ〜。
じいちゃんも若くてかっこいいのに〜‼︎
なんて思ってたら、
「おい。」
っていう声が後ろから聞こえてきて…
…あっ。神峰の存在忘れてた。
「お前なぁ。」
やばい、さすがにこれはまずい。
そう思ってると、
「あらあらぁ〜‼︎
どなたかなぁと思っていたけれど、もしかして、純怜ちゃんの彼氏さん?
もう、純怜ちゃんったら、なんで教えてくれなかったのよ〜‼︎」
「「っへ?」」
「ばあちゃん、すっごく楽しみにしてたのよ〜‼︎
お名前は、なんていうの?
さぁあがってあがって‼︎
水姫家へようこそ〜‼︎」
否定も遠慮もする暇のない、ばあちゃんの勘違いからきたマシンガントーク。
ばあちゃんはこういう話題になると、じいちゃんと同じくらいやっかいな人になることをすっかり忘れてた。
''ご飯、食べていくでしょ〜‼︎''なんて言いながら、神峰を玄関の方へ連れて行く。
「ばあちゃん、神峰だって、家の方がご飯つくってるでしょっ‼︎」
なんて言いながら後を追いかけるんだけど、
「うちの親、今アメリカツアー中だから。」
そういって、笑う神峰。