君色のソナチネ
そういう訳で、制服も文化祭の準備のために体操着に着替えてたし、部屋着に着替えなくてもいいかって思って、勢いのままに食卓を四人で囲っています。
掃除はもういいのかなと思うけれど、道具もそのまま放って、ニコニコして座るばあちゃん。
「神峰君っていったね。」
じいちゃんが聞く。
「はい、神峰 奏と申します。」
なんだか結婚をお願いしに来た人みたい。
神峰、緊張してるの?ぷぷっ。
「緊張しなくていいから、いっぱい食べてちょうだい。
ほら、おじいさん、あまり奏くんをいじめないであげて。」
「いじめてなどおらんわ。」
そんなじいちゃんとばあちゃんに微笑みながら、
「お気遣い、ありがとうございます。
こうやって、1人じゃない食事は久しぶりですから、とても嬉しいです。」
そういった神峰。
寂しい思いしてるのかな?
そう思ってると、グツグツ煮立った鍋からは、良い香りがしてきた。
今日は、匂いが食欲をそそる、キムチ鍋みたい。
なんで今日にかぎって、鍋なんだろう。
だって、ひとつの鍋ってことは、神峰もこの鍋をつっついて食べるんでしょ?
それって、間接の関節の関節キスくらいにならない?
あー、なんてバカなことを考えてるんだ。
そんなことを考えていたら、
「奏くん、どれだけ食べれるか、勝負だ!」
ばかなことを言い出すじいちゃん。
子供みたい。
ついに認知症になっちゃった?子供返りみたいな?
喉に詰まらせるからダメだよって言おうかと思ったのに、
「はい、受けて立ちますよ〜‼︎」
なんて言う神峰。
はぁぁ?
「大丈夫だって、見たところ、キムチと、豆腐と、野菜と、肉が入ってるみたいだから、詰まらないよ。それに、お前のじいちゃん、若そうだし。」
私の耳元で囁く神峰。
いや、そういう問題じゃないよね?
それに、肉詰まらせたらどうすんのよ。
そんな心の声が聞こえたのか、
「肉霜ふりだし。」
そ、そうですか…。
トホホ…。