君色のソナチネ
一人で歩いて来た一本道を、今度は二人で歩く。
来るときは心細かったのに、神峰がこうして隣にいてくれるだけで、安心できる。
美しかった世界が、もっと華やかに美しく見える。
退屈だったのに、楽しい。
月明かりに照らされたこんな幻想的な世界に、神峰と二人きり。
私の腕を掴んで一歩先を行っていた神峰が、歩幅を緩めて、私の横に並ぶ。
ちらっと見た彼の横顔は、月明かりに照らされ、いつも以上にかっこよくて、なにより色っぽくて、ドキっとした。
同じ歳にはみえないよ。
「なぁ、純怜。」
上からわたしを見下ろす。
そんな彼に胸の高鳴りは加速する。
「なぁに?」
「俺さ、お前のことが…、
、…やっぱりいいや。」
なにそれ。
「途中で言いかけないでよ〜。」
そう言うと、
「ごめんごめん、また今度ちゃんと言うから。今はこれで我慢して。」
「えっ?」
神峰の方を振り向く間も無く、私は横から抱きしめられていた。
神峰が私の頭を胸に引き寄せる。
ドキドキが止まらない。
息ができないよ。
でも、ドキドキしてるのは、神峰も同じみたいで。
そんな神峰に少し期待してしまう。
でもすぐに、
「さぁ、いくぞ。」
再び引かれた腕。
さっきと違って、手と手を絡ませてくれる。
このまま、この世界に閉じ込められたいな。
そんな事を思ってしまうくらい、幸せだった。