君色のソナチネ
「あの教会でなにしてたの?」
「あぁ、短期バイトみたいなもんだ。
次の指導者が現れるまでの児童合唱団の指導兼伴奏。
この学園の理事長に頼まれた。手紙で。
秘密が多いっていう噂通り、顔は出さないんだな、理事長。」
あっ、あの大人の伴奏してる人って、神峰だったんだぁ。
でも、
「最近文化祭の準備とかで忙しかったのに、大丈夫だったの?
うちのじいちゃんも、無茶ばかりおしつけるんだから。」
「あぁ、金曜だけだから。
……理事長ってお前のおじいさんだったのか?」
だから神峰は金曜日、いつも文化祭の準備抜けてたのか。レッスンだからかなぁと思ってた。
「うん、そうそう。
じいちゃんが理事長だよ。
何代目って言ってたかなぁ。
誰にも言わないでね。誰にも言ってないから。
私も、じいちゃんが仕事やってるなんて、中学まで全然知らなくて、高校生になって知ったんだ。
じいちゃん、仕事が面倒で、ほとんど家にいるから、いつのまにかそんな噂が定着したらしいよ。
そっちのほうが面倒なことしなくて済むし、嬉しいから、隠れ続けてるらしい。」
「誰にも言わないでねって、お前軽すぎるだろ。かなり衝撃的なんだが、お前のせいですんなり入ってきたぞ。」
「神峰だから話したんだよ。」
嘘。本当は口が滑りました、はい。
それが分かったのか、シラーっとした目で私をみる。
「えへへ。」
照れるように笑ってごまかす。
神峰だから、ごまかしなんて効かないことはわかってるけど、まぁ多目に見てね!
そんな念を送りながら。