君色のソナチネ




ー奏sideー



「では、自己紹介からお願いします。
まず、相園 星君。」



こういうのめんどくせぇ。



告白こそ群衆の前でやったが、もともと俺はこういうのはあまり得意じゃねぇし。



だいたい喋るのもだるい。
ピアノだけ弾かせてろ。



そう言いたくなる。



「じゃあ、お隣にいきましょう。
神峰 奏君。」



その気持ちを隠すためには笑顔を貼り付けるしかねぇが、それが1番めんどくさい。



「神峰 奏です。
よろしくお願いします。」



そう言うと女子達からの歓声が上がる。




笑顔を貼り付けたこんな俺のどこがいいんだろうな。

そういえば、純怜はこの俺の笑顔に騙されずに、それどころか、いちいちつっかかってきてたな。

他の女とはどこか違う。

色目なんて全然使ってこねぇし。

俺、たぶんそんなとこにも惹かれたんだろうな。

まぁ、あいつのピアノも含めて。




「次は、根崎新矢君。」


こいつも選ばれてたな。

確かにかっこいい。

女心は俺より分かってそうだし。

どちらかというと、王子様って俺よりこいつだろ。


それに宮田も選ばれていた。

あいつも、チャラいが、爽やかさもあって、男の俺から見てもかなりイケてると思う。

それにしても、俺たちが3人とも選ばれたってことは、明日から音楽棟の廊下とか、うるさくなるんじゃねぇよな?

それだけは、勘弁してほしい。

そうならないように願うだけだ。




「では、次は質問タイムといきましょう!」


…余計なこと聞いてくんなよ。


「神峰君は、ピアニストとして、既に活躍されてますよね、みなさんも知っている方がほとんどだと思います。

昨日のミュージカルでの大胆な告白は、計画されていたのでしょうか?」


そう思ったときに限って余計なことを聞いてくる。

記者会見かよ。

お願いだから、ピアノのことを聞いてくれ。



「まぁ、彼女のハートを掴んでやろうと思って、計画とまではいかないですが、頭の片隅にはありましたかね。」


「あのキスはふりなんでしょうか?それとも…」

は?んなこと言えるかよ。
この司会の女、ぜってぇカンペに書いてないこときいてるだろ。


「ふりです。」

「そうなんですか…、残念ですね、みなさん‼︎」


いや、そこ頷くなよ、観客‼︎


「それでは、あと一つ質問させていただきますね。

神峰君は、ピアノは何歳から始められたのですか?」


おっ、きたきた、まともな質問。


「両親が音楽家なもので、自然と弾くようになったので、はっきり何歳とかはいえないんですが、レッスンに通いだしたのは3歳くらいだと聞いてます。」


「3歳ですか‼︎
その頃からきっと、カッコよかったんですね‼︎」


…カッコよかった…ね。
まぁ、3歳の頃は可愛かったと言われた方が嬉しい気もするが…。



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