君色のソナチネ




「では、最後に、特技発表に移らせていただきます。」


やっと最後か。


「音楽科の方々は、自分の専攻している楽器で、普通科の方々は、指定はありません、ここに置いてあるものを使っていただいてけっこうです。」


最初からきまってんのかよ。
だから、ピアノ置いてあったんだな。


「時間は制限なしです。
ですが、長すぎるのは、時間の都合上、やめていただきたく思います。
では、普通科の方からお願いします。」



へぇ、橋寺ってやつ、ダンス上手いな。
バク宙とか軽々してやがる。




それにしても、ここ外だよな。
まぁ、軽く反響板はセットしてあるみてぇだが、響きよく聴かねぇと、音が逃げていくだろう。

まぁ、それは音楽科のやつならみんな同じ条件か。

さぁて、なに弾く。

純怜は聴いているだろうか。

ピアノらしく、ショパンの*バラ1でも弾いとくか?



そうこうしていると、相園先輩の出番がきたらしく、走って教室からとってきたであろう、ヴァイオリンをかまえていた。


この響きが抜けていく屋外での生演奏。
弦楽器にとっては厳しいはず。
何を弾くんだろうか。


さっきまでキャーキャー言っていた観客たちも静まり返る。



ー-ー♪~


へぇ、ツィゴイネルワイゼン。
サラサーテか。


やはり、ヴァイオリンらしい曲をもってきたんだな。


それにしても、うまい。


もともとこの曲は伴奏に、*管弦楽かピアノがつくんだが。


その伴奏なしでも、全然物足りなさを感じさせない、力強い弓の運びに細かな指遣い。


流石だ。


技巧的なパッセージを物ともせず、勢いのまま弾き終わった先輩に、拍手の嵐。


そりゃそうか、あんな技みせつけられたらな。


さぁ、俺もやるか。
聴いてろよ、純怜。











・**.○.**・‥・**.○.**・‥・**.○.**・‥・**

*バラード1番…ショパンが作曲したバラード4曲のうちの1曲。

*管弦楽…この曲の伴奏の管弦楽は小規模。
オーケストラのミニ版。

・**.○.**・‥・**.○.**・‥・**.○.**・‥・**




< 168 / 278 >

この作品をシェア

pagetop