君色のソナチネ
「では、最後に、特技発表に移らせていただきます。」
やっと最後か。
「音楽科の方々は、自分の専攻している楽器で、普通科の方々は、指定はありません、ここに置いてあるものを使っていただいてけっこうです。」
最初からきまってんのかよ。
だから、ピアノ置いてあったんだな。
「時間は制限なしです。
ですが、長すぎるのは、時間の都合上、やめていただきたく思います。
では、普通科の方からお願いします。」
へぇ、橋寺ってやつ、ダンス上手いな。
バク宙とか軽々してやがる。
それにしても、ここ外だよな。
まぁ、軽く反響板はセットしてあるみてぇだが、響きよく聴かねぇと、音が逃げていくだろう。
まぁ、それは音楽科のやつならみんな同じ条件か。
さぁて、なに弾く。
純怜は聴いているだろうか。
ピアノらしく、ショパンの*バラ1でも弾いとくか?
そうこうしていると、相園先輩の出番がきたらしく、走って教室からとってきたであろう、ヴァイオリンをかまえていた。
この響きが抜けていく屋外での生演奏。
弦楽器にとっては厳しいはず。
何を弾くんだろうか。
さっきまでキャーキャー言っていた観客たちも静まり返る。
ー-ー♪~
へぇ、ツィゴイネルワイゼン。
サラサーテか。
やはり、ヴァイオリンらしい曲をもってきたんだな。
それにしても、うまい。
もともとこの曲は伴奏に、*管弦楽かピアノがつくんだが。
その伴奏なしでも、全然物足りなさを感じさせない、力強い弓の運びに細かな指遣い。
流石だ。
技巧的なパッセージを物ともせず、勢いのまま弾き終わった先輩に、拍手の嵐。
そりゃそうか、あんな技みせつけられたらな。
さぁ、俺もやるか。
聴いてろよ、純怜。
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*バラード1番…ショパンが作曲したバラード4曲のうちの1曲。
*管弦楽…この曲の伴奏の管弦楽は小規模。
オーケストラのミニ版。
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