君色のソナチネ
「先生ー!」
「なんだ?白井?」
「神峰君に自己紹介してもらいたいんですけどぉ。
私達、まだ全然神峰くんのことしらないからぁ。
ってか、こういうとき、自己紹介するのが普通じゃないんですかぁ?」
「おぉ、そうだな、流石、学級委員。」
あー、白井ちゃん絶対神峰のこと狙ってるよ。
ミーハー女子だからなー。
「ということで、自己紹介してもらいたいんだが、神峰いいか?」
「ええ、構いませんよ。
改めまして、神峰 奏です。ピアノ専攻です。
先月まで、ウィーンに住んでおり、父親の仕事の関係で日本へ帰って参りました。
日本は6年振りで、とても懐かしく思います。
向こうでは、師匠の演奏旅行に同行し、リサイタルなども開いておりました。
これから、2年と少し、みなさんと音楽について、語り合い、競い合いながら、自分の技術を磨いていけたら幸いです。
どうぞ、よろしくお願い致します。」
おぉ、まさに絵に描いたような優等生だぁ。
仲良くできそう、安心した〜。
なんて思ってたのに…。
「あぁ、言い忘れてた。
俺の隣の席になるおまえ!」
…え?
「はい、なんでしょう?名前、水姫と申しますけど…?」
「俺におまえの演奏きかせろ。」
……は?この人、なに言ってんの?
ってかわざわざ申告してやってんだからそこは普通名前で呼ぶところだよね?
''水姫さん''って。
口調、急に変わってない?
もしかして、こっちが本性?
と思いながらも、違ったときが失礼だと思い、
「えっと、どういう意味でしょうか?」
わざわざ敬語使ってるのに、
「は?そのまんまの意味だけど?もしかしてお前、頭悪いのか?」
「…え?」
「…もういい、お前に拒否権は最初からない。
いいですよね、先生?自己紹介がてら、俺も演奏しますんで。」