君色のソナチネ
第3楽章
espressivoー表情豊かにー
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「そういえば、樹音ってさ、いつ先輩と知り合ったの?」
あのいろいろあった文化祭からはや1ヶ月。
あの時は色々ありすぎて、大変だったけれど、ようやく周りも落ち着いてきて、私たちは平凡な生活を送っている。
あの時と変わらないのは唯一、廊下から私たちのクラスを覗く女子と男子の数だ。
廊下をでてトイレに行くのも一苦労。
昼休み、弁当を食べ終え、雑談中の私たち。
そんな私達の声も、廊下の騒がしさに吸い取られそうな勢い。
ま、そりゃそうか。
ミスター空丘に、ミス空丘に出場した生徒の殆どがいるんだから。
わざわざ、進学棟からご苦労様です。
それにしても、あの時は驚いたし混乱したよね。
華菜が、根崎と付き合ってたこと。
樹音が野中先輩と付き合ってたこと。
それに、神峰と両想いで、付き合うようになったこと。
ついこないだまで、私の頭の中は整理できなくて、ゴッチャゴチャだった。
何回も夢だったんじゃないかって。
でも、華菜と、樹音との会話に恋バナが増えたり、神峰と一緒に登下校するようになって、だんだんと、''あぁ、現実なんだぁ。''って実感するようになったんだ。
「え?
あぁ、ルイ?」
樹音は、あのミス空丘で、野中先輩と付き合ってたことがバレたことにかなり驚いてた。
「私、ここの高校入る前は、アメリカの音大のpre collegeに通ってたの。
小学生までは日本にいたんだけど…、5年生のときに受講した公開レッスンで教えてもらった先生が、アメリカの方で。
君はすぐに留学したほうがイイって言われて、中学からそのまま、その先生についていったの。
でもさ、1人で行ったから、かなーり、苦労しちゃって、えへへ。
その時に、アメリカで知り合ったのがルイ。
お母さんがアメリカ人のハーフなんだ。
お父さんは日本人で、ルイは英語も日本語もできるから、私の日本語を理解してくれた。
英語を教えてくれながら、私を支えてくれたの。」
樹音は、ばれたことがきっかけになって、私たちに、もっと色んなこと教えてくれるようになったんだ。
こんな風に、ね。
文化祭で深まった友情。
きっと、かなりキツかったんだろうな。
フルートを学ぶために1人で外国にいったんだもん。
「先輩の存在、大きかったんだ、よね?」
「うん、もう本当に。」
そうやって涙ぐむ樹音。
いつも頼りになるって思ってたけど、それは、色々なことを生まれてからたった17年で経験してきた樹音だからだったんだ。
彼女の頬に光る一筋の涙が、とても綺麗に見える。
「それで、いつから付き合ってたの?」
華菜が聞く。
うんうん、気になる!
「彼がさ、日本に留学するって言い出したの。
それで、空港で別れるその時に、付き合ってって言われて。
1年間遠距離。
私はちょうどその時に、高校は日本って決めたとこだったのね、まだ彼には言ってなかったんだけど。
それで、私が行きたいって思ってた高校と、彼が留学するって決めてた高校が、ここ、空ヶ丘。
もう運命感じちゃったよ、あははは。」
笑ってる樹音だけど、照れてる。
かわいい。