君色のソナチネ
ー神峰sideー
「あぁ、うるせぇ。
ロクに話すらできねぇ。
廊下の奴らどうにかなんねぇの?」
「お前らがミスター空丘だけじゃなくて、ベストカップルまででるからだろ。
しかも、奏、お前どっちも1番とりやがって。」
昼休み、呟く俺にそんな事を言ってくる弦。
「いや、それ違うと思うぞ。
お前がまだ独り身だからだろ。
今年のミスター空丘、独り身のやつ、お前と普通科の2年の奴だけだし。
お前狙って女子たちが集まってくるんだろ。
まぁ、男達は知らねぇが。」
俺も新矢に同感だ。
「お?まじ?
ちょっとナンパしてくっか。」
「やめとけ、んな事やってたらいつまで経っても女できねぇぞ。」
軽いノリの弦に釘をさす。
「どーうかん。」
「おいおい〜、そりゃないよ〜、二人して。」
情けない顔して言う弦。
だが、そう言いながら、俺らの忠告はちゃんと聞く、意外に素直なヤツだ。
早く厳しい彼女でもできてくれればいいものを。
まぁ、余計なお世話か。
「もしかして、もしかして、
男達はお前らの彼女狙ってんじゃねぇの〜?!」
にやけながらいってくる。
「ぶっつぶす。」
「そ〜う君、言い過ぎだよ〜。
せめて、ひねりつぶす、ぐらいにしとかなきゃ〜。」
「…いや、ふたりともあまりレベル変わんないと思うぜ?
むしろ、新矢のほうがレベル上がってるんじゃね?
真顔で言われると本気に見えるから、止めてくれる?」
確かに、ぶっつぶすは良くなかったか。
純怜に見せれないことはしたくない。
「それで、奏はどうなの、あれから。」
「あ?」
「水姫さんとだよ。
どこまでいったの?」
女子の恋話かよ。
新矢のやつ、何故か俺のこと、やたら聞いてくるんだよな。
「文化祭以来なにもしてねぇよ。」
なんでお前らにいちいち報告しないといけねぇんだ、気持ち悪い。
だが、言ってしまうんだよな、これが。
何気に俺は文化祭以来気を許してしまっているらしい。
ゆる〜いこいつ等の雰囲気のせいだろうな。
「ふぅ〜ん。」
「いいんじゃね、別に。」
そして、この返答のせいなのかもしれない。
質問してくる割に、それ以上つっこんでこない軽い返答。
「まぁ、俺には理解できないけどね〜。」
ニヤっとしながらそう言ってくる新矢。
まぁ、確かに、欲がないといえば嘘にはなるが。
なんかあいつが隣にいるだけで、満たされる。
それに、あいつの心、本当に透き通ってるんだと、この1ヶ月で実感したんだよな。
表情豊かで、百面相をしているみたいにコロコロ変わる。
それも純怜の音楽につながってるのだと思う。
そんな彼女の純粋な心を汚したくない。
無理やりする事だけは避けたい。
あいつに余裕が生まれてから少しずつ、あいつのスピードに合わせて、できるだけ綺麗に透き通った愛を教えていってやりたいと思っている。
「ふ〜ん、ベタ惚れなんだ〜。」
「うぇー、奏、お前かなり好きなんだなー‼︎」
口にでてたんだな。
俺としたことが。
「理解はできないけど、いろんな付き合いがあっていいとおもうよ〜。」
「あー!俺も本気で彼女つくるかなー‼︎
お前らの話聞いてると欲しくなったー‼︎」
本当、自由な奴ら。
だが、
「弦、無理やりつくるのだけはやめとけ。」
「どういけん〜。」
「では、どうすればいいのですか、先輩方っ‼︎」
そういって敬礼をしてくる。
「知るかっ。」
「わかんな〜い。」
「そ、そんなっ‼︎」
床にへばり付く。
汚い。
俺と同じことを思ったのか、
「弦、汚い。」
新矢から発せられる冷たい言葉にスグに起き上がる弦。
こいつら見てると飽きねぇな。
それにしても、新矢のやつ、仲良くなるとかなり緩い。
喋り方も性格も。
たまに弦には鋭いが、それも見ていて面白い。
今日は、金曜日か。
「すまん、ちょっといってくる。」
ひゅーひゅーなんて言って茶化してくる弦を無視して腰を上げた。