君色のソナチネ
っと思ったけれど、子供達の目を輝かせた顔を見てると、本当のことをズバズバ言うのは気がひける。
「すっごく、びっくりしたよ。
綺麗で、丁寧だった。
それに、ちゃんと音楽のことも分かってる。」
まずは、感じたことから言わせてもらおう。
「そういうことはいいから、思ってる事、はっきり言え。
そっちの方がこいつらの為になる。」
…はいはい、分かりましたよーだ。
「まず、ぼく。
合唱、嫌い?」
「きらいじゃないよ…でも、きまりごとがたーくさんあって、かけるくん、たまに、おんぷさんみたくなくなるの。」
「じゃあ、好きなように歌ってごらん。」
「え?いいの?」
「うん、でも翔君、一つだけ、お姉ちゃんに約束してくれるかな?周りの、お姉ちゃん、お兄ちゃん達の声をよく聴いてね?」
「うん、わかったぁ‼︎」
「次に、わたし。
お名前なぁに?」
「…ら、んです。」
「蘭ちゃんか。
いい名前だね。」
「おねえちゃん、ありがとう。わたし、このおなまえだいすきなの。」
「うん。
ねぇ、蘭ちゃん、合唱してるときも、その笑顔でいれる?」
「え?どうして、おねえちゃん?」
「笑顔はね、上手に歌える魔法なんだよ。
だから、笑顔、忘れないで。」
「ほんとのほんと?」
「うん、ほんとのほんと。」
「わかった、やってみるね。」
「次にぼく、何年生?」
「ぼくじゃねぇ、俺だぁ。」
「わかったわかった、ごめん。
何年生か聞かせてくれる?」
「四年。」
「小学校、四年生か。
好きな子とか、いる?」
「は?なんでお前に言わなきゃならねぇの?」
「おい、拓真[takuma]口に気をつけろ。
目上の人への言葉遣い、いつも教えてるよな?」
「奏、いいから。」
見守ってて?ね?
そう思いながら視線を送ると、窓の方へ移動して、外の風景を見だした、奏。
「君、拓真君って、言うんだね。
かっこいい名前じゃん。
モテるでしょ〜?」
「うん、拓真、みんなに好かれてるよー‼︎」
「彩芽[ayame]ちゃんと仲がいいんだ〜‼︎」
拓真君と同じ小学校の子達かな?
拓真君の変わりに答えてくれた。
「あら。」
「うっせぇ。」
「拓真君、ちょっと耳貸して?」
「なんだよっ。」
「その、彩芽ちゃんを思い浮かべて合唱できる?」
「なっ!」
「いいから、やってみて、ね?」
そう言って、片目を瞑ると、睨まれたけれど、軽く頷いてくれた。
「あなたは?」
「谷口 晴矢[taniguchi haruya]、中3です。」
「晴矢君。
あなたの声は、すごくいい声だね。
みんなに馴染んで、支えるような声。
でも、ソロのときは、もう少し個性だしてもいいと思うよ。
真面目に歌いすぎ。」
「それ、いつも奏さんに言われるんですよね。
でも、よく分からないんですよ。」
「まぁ、確かに難しいところではあるけれど、頭に強いイメージを持ってたら、それがでてくると思うよ。」
「やってみます。」
それから、一人一人に声をかけていく。
そして残りの1人、
「あなた。
さっき、楽譜をくれた方ですよね?
リーダーさんですか?」
「えぇ、そうです。
葉月 桜[hazuki sakura]って言います。
中3です。
純怜さん、そんな丁寧な言葉で話さないでください。」
「桜ちゃん。
わかった。じゃあ、遠慮なくタメで話させてもらうね。
桜ちゃんさ、ソロ緊張感がまだ強いでしょ?」
「はい、ソロになると、硬くなってしまって、息が浅くなってしまうんです。」
「かなり、いいところまできてると思うから、
細かい事を意識しすぎず、曲のイメージをしっかりもって。」
「っはい!やってみます!
ありがとうございます!」
「うん。」
「じゃあみんな、もう一回最初から通せるかな?」
ーー-ー〜♪~♫〜