君色のソナチネ
ー奏sideー
昨日コンクールで聴いた彼女の演奏がまだ頭から離れない。
''助けて''
ほんの一瞬だが、彼女演奏から感じた''悲しさ''。
だが、彼女が弾いていた曲には、そんな感情がある場面は一切ない。
それを彼女は分かっていた筈なのに。
分かっていることをミスするようなマネを彼女がするとは到底思えないのだ。
だとすると、無意識のうちにそれをやっているのか。
いや、でもあれ程の実力をもった彼女に無意識なんてあるのだろうか。
ますます気になってきた。
一般の見方が真逆なのも気になっている一つの要因だ。
暖かくて、人間味のある演奏をする。
そんな風に皆が評価しているということは、俺が間違っているのか?
いや、そんな筈はない。
確かにあの時、そう聴こえたんだ。
だとしたら、彼女の異変に誰もまだ気づいてないということか、彼女自身も。
まぁ、これからその彼女ともクラスメートとなるみたいだし、徐々に探っていくとするか。