君色のソナチネ
「よし、10分前だっ!
じいちゃんばあちゃん、いってくるよー‼︎」
「あらあら、可愛い服きてぇ〜。
純怜ちゃん、神峰君とデート?」
「なっ‼︎
そ、そんなんじゃな…」
…くもない、か。
そっか、私、今から神峰と二人っきりでデートするん、だ、、。
うぅ、心臓もつかな…。
「若いっていいわね。
私とおじいさんにもそんな頃があったのよねぇ、なつかしいわ…。」
顎に手を添えながら、明後日の方を向いてるばあちゃん。
なんだか、家族に彼氏の存在を知られるって、ちょっとくすぐったい。
出来れば隠したい気もしてたくらい。
「じゃあいってくるよ、ばあちゃん‼︎」
「はーい、楽しんでおいでー‼︎」
そんなばあちゃんの呑気な声を後ろに、私は玄関を飛び出した。
わわわっ、今ので五分前になっちゃった。
門まで走らなきゃ!
走る私の頭のずっとずっと上に広がるのは、雲ひとつないスカイブルーの空。
梅雨入りしてからずっと降り続いてた雨も嘘みたい。
もう夏もすぐそこまでやってきてるんだなー。
そう感じずには入られないほどの綺麗な空に感動してると、門へとたどり着く。
「ま、間に合ったー‼︎」
ハァハァ、はぁ、、
久しぶりに玄関から門までの激走。
すでに半端なく疲れた。
小学生の頃は毎日のように走ってたけど、この位どうってことなかったのに。
流石に高校生にもなったら、時間の使い方も上手になって、そんな事もなくなった。
それとともに体力も衰える…。
私も大人になってるんだよね…、いろんな意味で。
「30秒…」
「え?」
隣から聞き覚えのある声が聞こえたと思って振り向くと、門扉に寄りかかり、ジーンズのポッケに右手を掛けて、左腕を見ている奏の姿。
「げっ、いたの?!」
全然気がつかなかった。
気配なさすぎ。
消してるのか?
「30秒…か。」
な、なんだこいつ!
30秒の遅刻くらいいいだろっ!
秒単位かよっ!
逆に気持ち悪くてひくわ‼︎
…というか、多分私遅刻してないよ。
だって、体内時計が今11時をお知らせしてくれたんだもん。
「ねぇ、奏。」
「…。」
え?無視、されてんの?
「ねぇ、奏ってば。
ごめん、許して。」
「…。」
…。
あぁ、そうですかそうですか、
いいですよ、そっちがその気なら。
だいたい30秒の遅刻くらいで、こんなに怒る心の狭い男なんかこっちから狙い下げですよーだ‼︎
「もう、奏のバカーーーーー‼︎
あんたなんか知らない‼︎」
思いっきり隣で叫ぶ。