君色のソナチネ
ー奏sideー
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都市部の中央駅発。
高くそびえるビル達は一瞬で過ぎ去り、すぐに草原へと姿をかえる。
風を切り、草を分け、颯爽と走る普通電車に揺られること30分。
向こうの方に見えていた山は次第に近づき、今は電車を挟むように両傍に迫る。
その谷のカーブを曲がりきると、とある町へと開けた。
町の先には、コバルトブルーの海が広がっている。
「もうそろそろだな。」
俺の肩に頭を預けて呑気そうに眠るこいつは、この小さな町をどう思うだろうか。
「純怜、起きろ。着くぞ。」
「ん〜、おきる〜…
…
…
…
…スー、スー。」
おい。
ねてるじゃねぇか。
俺だって、お前の寝顔が可愛すぎて、ぎりぎりまで寝かせてやってんだよ。
「起きねぇとキスするぞ。」
「起きましたっ、はい‼︎
目ぱっちり、ほら‼︎」
「…可愛くねーやつ。」
そう言いながらも、髪を手で整えてやる。
『次は、海の村町です。
降りるときは、電車とホームの隙間にご注意下さい。』
アナウンスが流れる。
何年ぶりだろうか。
久しぶりの町の名前の響きに、胸が高まる。
「ほら、いくぞ。」
純怜の手をとり、電車を降りたーーーーー