君色のソナチネ
ー純怜sideー
奏に手を引かれて降り立った、無人駅のホーム。
たまに風に乗って潮のかおりが飛んでくる。
顔を上げると、目に飛び込んでくる海。
ーーーザブーン、ザバーン、、
砂浜に打ちつける波の音に耳を傾けながら、キラキラと輝く海面を見つめる。
「…綺麗。」
「だろ?」
隣に立っていた奏を見上げると、自慢気に笑ってる。
あ、こんな顔して笑う奏、初めてみた。
いつもは、歯を見せずにクールに笑う彼。
でも、今は歯をニカッって出して、無邪気な子供っぽい笑顔。
うぅ、可愛いかも。
少しだけ、母性がくすぐられる。
いや、まだ私、母親になったことないんだけれどね、笑。
それにしても、こんなとこ来たことないな。
というか、まず海なんて何年ぶりだろう。
最近来てないなぁ。
海の村町って書いてあるけど、地元からどのくらい離れてるんだろう。
きっと、結構距離あるよね。
私そんなに寝てたのか…。
「奏、肩借りてたけど、疲れなかった?
結構時間かかったみたいだし。」
「疲れてねぇよ。
それに、ここ、俺らの地元からそんなに離れてないぞ。」
「え、嘘!ほんと?
こんな綺麗なとこが?
こんな町知らなかった‼︎」
「普通列車にのって、30分くらいだ。
特急だと、この駅通過するから普通は知らねぇだろうな。」
「で、なんで奏はこんな綺麗なところ知ってんの?」
「あぁ、俺、昔
ーーーガ、ガ、ガ、ガ、、
奏の声は、よく分からない音にかき消される。
なんの音?
と思い、音のする方を向くと、海岸沿いの道をコッチに猛スピードで走ってくる、すごく調子の悪そうな軽トラ。
「おーーいっ!
そうすけーーーーーー‼︎」
ん?
その軽トラから身を乗り出して変なおじさんが、私達に手を振ってる気が…
いやいや、な訳ないか。
まったくもって知らない人だし。
「げんさん‼︎お久しぶりです。
お元気でしたか?」
は?