君色のソナチネ
車に乗ってきた道を、奏と手を繋いで歩いて帰っているんだ。
左側に広がる来た時と変わらない海。
少しだけ太陽は傾いたけれど、この季節。
まだまだお昼は長いね。
「また来たいなぁ。」
帰るときになったからなのかな。
なんだか誰もいない砂浜が寂しく感じる。
自分の気持ち次第で、変わらない風景が変わって見えるんだもん。
人間って不思議だよね。
「またいつでも連れてきてやる。
今度は泳ぎにこようぜ。」
「やったーーー‼︎」
またこの海、見れるんだ!
…泳ぐ…、…水着ですか…?
「…泳ぐのは勘弁。」
「なぜだ?気持ちいぞ?」
「…」
だだだ、だって、み、水着でしょ…?
「なるほど、な。
絶対連れてきてやる。」
口角あげて、ニヤッと笑う久しぶりの悪魔な奏くん登場。
「ぎゃーーー‼︎」
絶対来ないんだから。
あ、でも、来なかったらこの海見れない…。
「いやーーーー!」
よし、走ろう。
駅まで走るぞー!
と思って、走ること10メートル。
「お前、靴擦れ酷くなってもしらねぇからな。」
あ、そうでした。
結局、腕を引かれ、止まった私。
ちゃんと歩いて、海を目に焼き付けながら帰りましたとさ。