君色のソナチネ





ということで、電車おりて、駅前のデパートに入ってる、大型の楽器店にきた、



「なぁ、30秒で弾けて、それなりに聞き応えある曲なんか知らね?」



のはいいけど無茶苦茶なこと言いだした奏くん。



「そんな曲、あったらコッチが知りたいわ。」



「だよな。
まったく、神父さん、無茶言い過ぎなんだよな。」



「どういうこと?」



「今度、合唱団の保護者向けに、発表会するらしいんだが、まぁ、授業参観的な?
それで、俺に何か一曲弾いてくれって言われたんだよな、一昨日。
それは全然いいんだが、むしろ有難いんだが、時間が30秒とか……。」



「む、無茶苦茶。」



「あぁ。だから、お前に相談したところだ。
やっぱ勝手に編曲するしかねぇかな。」



「うん、そだね。
それが一番いいと思うよ。
それがダメなら、店員さんに聞いてみる、とか?」



「正直な話、店員が俺らより知ってると思うか…?」



「…。」



「やっぱ、編曲するわ。」



「せ、先生とか、学校の。」



「俺らより知ってると思うか…?」



「…編曲、手伝います。」



「あぁ、助かる。
とりあえず、元にする曲探すから意見聞かせてくれ。」



「もちろんですとも。」



どんな雰囲気なのかな、その発表会って。




奏に聞こうとした時、




「…あの〜、違ったらすみません。
神峰 奏様と、水姫 純怜様でいらっしゃいますか?」



話しかけてきた店員さん。
なんだろう。
そう思って、




「はい、そうですが…?」




答えたんだけど。




「わぁ、やっぱり。

突然話しかけさせていただいた無礼、お許しください。

その上、大変不躾で申し訳ないのですが、ここに、サインして頂けませんでしょうか?

レッスンに通ってくる子達の励みになればと思いまして、飾らせていただきたいのですが…。」







< 213 / 278 >

この作品をシェア

pagetop