君色のソナチネ
「そこ、34小節目の4拍目裏の八分休符意識。
もう一度、25小節目頭から。」
「そこ、アルト、音程ずれてる。
小学生、しっかり先輩の音聴いて。」
「ソプラノ、そのスタッカート、もっとどうにかならねぇの?
上に飛ばせよ。全部落ちてるけど?
腹筋!支え!」
予選、県大会、地区大会を順調に進んだ合唱団。
来月に迫った全国大会へ向けて、奏にも力が入ってるみたい。
「だから、そこの休符感じろっていつもいってるだろ?
今になってそんなことも出来てないなんて全国大会じゃありえねぇって。」
あーあー、ちょっと厳しかったんじゃないの、今の。
小学生、涙ぐんでるし。
仕方ないなぁ。
よっこらしょ。
「ねぇ、奏、ちょっt」
「何で言ってる通りにできないんだっ!!」
もう、言い過ぎだって。
ーーーズキっ。
「うぅ…。」
こめかみに走る一瞬の痛み。
目がチカチカして、思わずしゃがんでしまう。