君色のソナチネ
形式通りの自己紹介をしたが、このままじゃつまらない。
「俺におまえの演奏きかせろ‼︎」
ぶっ飛んだ事を言っているのは自分でも分かっているが、担任も適当な奴らしく、俺も挨拶がてら弾くからということでそのまま話が通った。
水姫純怜は、当然怒ってきたが、俺が言いくるめた。
第一印象通り頭のまわらない奴のようなので、扱いやすくて助かった。
この学校に受かったんだから、頭のできは悪くなさそうだが。
まぁ、あいつがこの学校通るのは、当然だな。
''なんでわたしがピアノ専攻なんて分かったのよ''
と言っていたが、自分が有名人だということを知らないのか。
本当、面白いやつだな。
驚くほどの才能をもっている彼女を、この学校が放っておくわけがない。
その反面、才能が全くないと判断された者は簡単に落とされる。
だから皆、自分には才能があると信じ、血の滲むような練習を毎日毎日続けて、この学校を受験するんだ。
受かったとしても、毎学期の試験の成績が悪かったりすると、最悪、退学になる。
蹴落とされないようにしないとな。
俺はホールへと向かいながら、弾くための準備をする。
たしか、俺からだったな。
そうだな、曲は5分程度だろうな。
クラスの女子どもがアンコールを要求してきそうだから、もう一曲軽いのを用意しとくか。
弾く曲を選考しながら、いつも通りのパターンで体を動かしているうちにホールへとついたのだった。