君色のソナチネ
前を行く皆の後ろを歩く。
いつもは静まりかえる河川敷。
今夜は無数の赤い提灯と屋台の灯りに照らされ、賑わっている。
その雰囲気が懐かしい。
「…そういえば。」
「ん?どうした、純怜?」
「いや、あのね、昔、といっても小学生の頃に一度だけこのお祭りに連れて来てもらったことがあるの。ばあちゃんとじいちゃんにね。なんだか懐かしいなぁって思い出してた。」
私のその言葉に、手を繋いで隣を歩く奏は、''そうなんだな…。''と呟く。
屋台の灯りに照らされるその彼の横顔はとても優しい。
「なんだか幸せ…。」
「人混みは苦手なんじゃなかったっけ?」
意地悪そうに彼は言う。
「まぁそうだけど、奏と歩くなら大丈夫?」
奏とじゃなかったらきつかったけど。
「現金なやつ。」
「な、そんな事言わなくてもいいじゃん。」
「ああ、いつもの可愛さをさらに超えてきたお前にムラムラしたからな。少しいじめた。」
「ムラムラ?」
え、えっと、暑いの?
確かに湿度も高そうだし…。
「なんか飲む物買ってこようか?」
「今の会話の流れでどうしたらそうなる?
お前ってたまに天然なのか、バカなのかわからねぇな。」
「天然でもないし、バカでもない、よ?」
「天然はみんなそう言うだろ。」
むう。
「奏の意地悪。」
「お前が可愛いすぎて綺麗すぎるからいけないんだ。」
「んにゃにょぇ〜っ!」
なにそれって言いたかったのに頬っぺたを揉みくちゃにされてできない。
「なにイチャイチャしてるの、お二人さん。」
そんな時、笑いながらからかいの言葉をかけてくる樹音とみんな。
そんな皆を笑って誤魔化しながら、また皆の中へと溶け込んだんだ。