君色のソナチネ
gemendoー苦しげにー
あの楽しかった夏祭りの日を境に、私の生活は激変した。
通年のように、今年もコンクールまで残りが少なくなり、朝から晩までピアノに向かい、楽譜に向かう日々。
時には楽譜を枕もとに置きながら眠る事だってあった。
夢の中でもピアノを弾く。
時間を忘れて昼食を忘れたり、昼夜逆転してしまったり。
それだけならまだマシな方。
昨日なんか、風呂入るの忘れてたからね。
そんなこんなで過ごしてたら、コンクールまで残り1週間になった。
だから、そんな生活ともおさらば。
もうこれだけやってきたのだから、できない方がおかしい。
あとは、コンクールに向けて、朝方の生活リズムに戻し、体を慣れさせる。
いつものルーティンを辿ってる最中なんです。
奏は、そんな私を気遣ってくれたのか、連絡はない。
え、それって呆れられてるんじゃないの?
って心配になりそうなんだけど、私に、その心配すらさせないように気遣ってくれてるんだよね。
「よっこらせ。」
あー、ピアノの椅子に長時間座りすぎて、腰痛い。
ポンポンと腰を軽く叩きながら、キッチンへむかう。
冷蔵庫を開けると、プリンが1つに栄養ドリンクが1本。
「うふふ。」
クッションに座って、それを食べながらひと息つくのが小さい頃からの日課になってるんだ。
その情報をどこから仕入れたのか、奏は3日に1回、プリン3つと、栄養ドリンク3本を持ってきてくれてる。
たぶんばあちゃんかじいちゃんのどちらかに聞いたんだろうなぁ。
そこまでしてくれる彼には、本当に感謝してる。
なのに、申し訳ない事に、持ってきてくれたとき、ピアノ弾いてて気がつかなくって、いつもばあちゃんかじいちゃんがもらってるんだよね。
後から2人のどちらかから受け取るんだけど、
あーまた会えなかったなぁ。
なんて少しへこむ。
ずっとへこんでる暇なんてないからすぐ立ち直るんだけど、もうそろそろ会いたいかもなぁ。
なんて思うのは、やるだけやって、少し気持ちに余裕ができてきたから。
頑張ったもんなぁ。
少し自分を褒めつつ、プリンを食べていると、チャイムが鳴る。