君色のソナチネ




「はーい、どなたですかー?」


こんな格好だけど、まぁいいか。
どうせ宅急便だろうし。


なんて思って出た私はバカだった。
今食べてたプリンと栄養ドリンクが、最後の1個ずつだという事すら忘れていたのだから。


扉を開けるといたのは、紛れもなく、私の彼で…。


「はぁ、そんな事だろうと思った。」

呆れたようにため息をつかれ、慌てる。


ぎゃーーーーーーー‼︎

まってまって、私今ジャージにヨレヨレのシャツ着てて、、、

いや、それ以前に風呂入ってなーい!!!

さ、最悪だ。


なぜこういう時に限って…。
神様のいじわる。



「ちょっと着替えてくるね。」


そう言って急いで着替えようと向きを変えたけれど、


「おい、まて。」


そう言われたかと思うと、腕を掴まれる。


「ご、ごめん、ふ、風呂も入ってないから…。
汚いから離して。」


なのに、何を思ったのか、腕を引かれたと思ったら抱きしめられる。


「ちょ、ちょ、本当に汚いって。」


「…大丈夫だから。」


「いやいやいやいや、だめだっt…」


ええええーーーー!
キスされてる?


「お前、少しは黙れねぇの?」


そう言われると、また熱いキスが降ってくる。


あー、もうこれは抵抗しても、奏が気が済むまで終わらせてくれないなぁ。


なんて思って、私も受け入れる。
久しぶりの触れ合いがこんな形になるなんて…。


嫌われたらどうしよう。


なんて思ってたのに、そんな事を少しも思ってないのか、いつもと変わらない奏の愛情が伝わってきて、胸がいっぱいになる。


しばし後、離れる私たち。


先に口を開いたのは奏。


「プリンとドリンクだけでもちゃんと食っとけよ。
邪魔したくねぇから、1週間分入ってる。
無理すんなとは言わねぇから。
本番、見に行く。
またな。」


「え、うん、ありがとっ。」


呆気にとられている間に玄関からいなくなった奏。



ちゃんと感謝の気持ち届いたかな?

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