君色のソナチネ



ー純怜sideー



「はぁーーーーーーっ…。」


もう何分閉じ篭もってるだろう。


ドレスを着たままトイレの一室にいる私。


「…やっぱりトイレが一番落ち着く。」


ホールのあの広い空間で沢山の人に聴かれるプレッシャーを跳ね返したあとの、トイレの狭い空間で1人で閉じこもる安心感といったら何にもたとえられない。


便器に座った瞬間に今頃かと震え出した手も、落ち着いて来た。


もう30分くらい経つかな。


結果発表もあるし、もうそろそろ着替えなきゃなー…。


そう思い、ぼんやりした頭で体を動かし、控室のトイレからでて着替え始める。


控室のモニターに映るのは、小学低学年くらいの男の子。


「この子、上手…。」


その子のピアノを聴いている間に着替え終わる。


「後は、整理して…。」


身の回りを片付けて控室をでて、とりあえずくつろぎたいと、ホワイエへ向かう。


「ふへーッ…。」


フカフカの1人用ソファーに思いっきり身を沈めると、口から魂が抜けていくみたい。


床には落ち着いたワインレッドのカーペットが敷き詰めてある。


市営の文化会館なのに、高そうなカーペットにソファー。


いくら使ってるんだろ、国庫支出金?でももとは税金なんだよねー。


リッチなこと。


思う存分使わせていただこーっと。


そう思い、ソファーの背もたれにぐりぐりと首を押し付けて解していると、


「ちょっと、淳平!!!」


甲高い怒鳴り声が聞こえて来てビクッとなる。


声のした方を振り向くと、お母さんなのかな?その位の年に見える女性と、さっきのモニターに映ってた上手だと思った男の子がいた。


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