君色のソナチネ




「なに、あの演奏。」


今度は低い声でその子のお母さんらしき人が男の子にいい詰める。

相変わらず声は大きいまま。



確かに、ここには私しかいないけどさ…。

そのお母さんはこっちに背を向けているから、私がいることに気がついてないのかも。



うーん、というか、貴方のお子さん、結構いいセンいってたと思うんだけどなぁ。



私がそんな事を思っている間もそのお母さんは子供を叱り、責め続ける。



そんなに言ったら…。



ほら、男の子が泣きだす。



それでもお母さんの勢いは増していくばかりで…。



ちょっと言い過ぎなんじゃないかな?



なるべく聞かないようにしようとしてたんだけど、さすがに無関係な私でも焦り始める。



軽く声かけてみようかな。



そう思い、ソファーから立ち上がって2、3歩進んだ時。



–「何で言った通りに出来ないのッ!!!」


–––ひときわ大きく叫ばれる声。


––––––息を切らす母親。


––––––––––爪が食い込むほどに固く握りしめられた拳。

–––––––––––––今にも男の子に殴りかかりそうな程ピリピリした雰囲気。





「…や、だっ。」


うぅ、気持ち悪い。


激しい頭痛がして、目がチカチカと怪しく霞、立っていられなくなって崩れ落ちるように床に伏せた時。


今目の前で見たのと似た光景がフラッシュバックする。




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