君色のソナチネ




下を向いている私。


視界には正面に誰かが立っていて、降ろされたその人の腕は震え、拳が固く握られている。


荒い息遣いが私の耳に届く。


ーーーゴメンナサイ…。ーーー


そんな気持ちが私の奥底からせり上がってくるけれど、あまりの雰囲気に口を引き結ぶ。


内臓がグルグル回って熱くたぎる。


気持ち悪いよう。



そんな時、降ってきた声。




–––––『どうして言った通りに出来ないのッ!!!』–––––



打たれるっ!


そう思って身構えたけれど、その腕は降りてこない。


恐る恐る涙に濡れた目を開けると、自分で自分の手首を押さえている女の人がいた。


その女性は唇を噛んで踵を返し、ホールの出口へと歩いて行った。


「まって…お、かあ、さん…。」


嗚咽を押さえながら私の口からでた言葉はとても小さくて、呼び止めることもできず、ゴメンナサイを伝える事もできなかった–––––––




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