君色のソナチネ

spiranteー灯が消えるようにー





生前のお母さんは教会で子供達に合唱を教えてた。


私はいつもお母さんについていった。


合唱を教えているときのお母さんはいつも笑顔で優しくて大好きだったんだ。


そんなお母さんを豹変させるのはいつも私のピアノだった。


ゴメンナサイ。




–––れッ、純怜ってば、おーいっ!」




「うわっ、な、なに?」



目の前にいたのは華菜。


「もう、大丈夫なの?
今日ずっとぼーっとしてるよ?

それに、夏祭りの時より痩せてるけど、ちゃんとご飯食べてる?

それ以上細くなったらピアノ弾けないよ?」


「う、うん、大丈夫大丈夫。
ちゃんとご飯も食べてるよ〜‼︎」


…本当は食欲がなくてほとんど食べれないんだけど、そんなこと言えないし。


「それで、何の話?」




–––––あのコンクールから時は過ぎ、今日からまた新学期が始まった。


あの日、目が覚めたら家のベッドの上でした。


じいちゃんとばあちゃんの話では、奏が運んでくれたそう。


迷惑かけっぱなしだなぁ。


あれから、かなりの頻度で奏からメールが来る。


''お前大丈夫か?何か変わったことないか?''って。


私はそのメールに決まって、''大丈夫だよ、心配しないで。''って送り返す。


でも本当は大丈夫じゃない。


かなり大丈夫じゃない。


お母さんの事を思い出してからというもの、ピアノを思うように弾けなくなってる。


それを見破られるのが怖くって軽く奏をさけてるのかもしれない。


ピアノを弾くのが怖くって怖くって、正直かなりきついんだ。


うーん、スランプなのかなー?


早く弾けるようになりたい。


そう思うけど、日に日にピアノ恐怖症は強くなってる気がする。



「ねぇ、純怜、聞いてんの?」


あ、しまった。



そう聞いてくるのは樹音。



「ご、ごめん、もう一回お願いしたく存じます。」


「もーう、ちゃんと聞いてよねー!」


笑いながらいってくる華菜。



「ごめんごめん。」


「試験の曲、決めたー?」


「へ?」


「1ヶ月後にある試験!」


「は?1ヶ月後って早くないかい?」


「またあんた先生の話聞いてなかったのね。」


先生の話?


「文化祭の準備が後半から始まるから、試験を早めにするって夏休み前に言われてたのよ。」


ま、まじっすか、華菜さんそれ。
やっちまったー。
まいいか。


「んじゃこの前コンクールで弾いたの弾くわ。」


「もう本当に純怜適当。
適当なのか融通が利くのかよく分かんないわ。」


呆れたような2人にあははは〜って苦笑いしておく。




うわー、どうしよう。

次弾くの、コンクールの本選だと思ってたわ。

1ヶ月後、弾けるようになってるかな。

いや、弾けるようにならなきゃだめなんだ。



つらいよ〜‼︎

神様助けて!


< 243 / 278 >

この作品をシェア

pagetop