君色のソナチネ
「ふぅ…。」
あ、しまった。
そう思った時には遅かった。
我に帰らないように、ぶっ通しで3楽章まで弾き切ろうかと思っていたのに。
気が付いたら一息付いていて…。
''大丈夫大丈夫、言う通りにできてる。''
そう自分に言い聞かせ、また3楽章へと集中を持っていく。
ーー-♪~
イメージがふと降りてきたのを合図に駆け上がるアルペジオを弾きだした。
''っあれ…。''
イメージの世界に入りきれてない。
イメージが薄すぎる。
そんな考えが頭の中をよぎった瞬間、スフォルツァンドスタッカートの和音を盛大に外してしまった。
''っ‼︎''
た、立て直さなきゃ。
そう思う程に指が言うことを聞かなくなっていく。
堰を切ったように脳みそに入ってくる沢山の雑念がますます指への指令を邪魔する。
あ、まって!
自分の指からこぼれた1つの音を追って掬い上げる。
''お願いだから最後までどうか…!''
そう願った時。
''何で言った通りに出来ないの!''
毎日夢に出て来て、うなされ、悩まされ、スランプの根源となったあの悪魔みたいな言葉が頭の中に痛烈に響いてくる。
その瞬間。