君色のソナチネ




ーーーーー



「純怜ちゃん、おにぎりおいとくわよ。
しっかり食べなさいね。」



廊下からばあちゃんの声が聞こえる。



あの日からどれくらいが経ったのだろう。



3日?それとも1週間?



直ぐに気を戻して、バスに乗って家に帰ってくると誰もいなくて、自分の部屋に入り鍵を閉めた。



カーテンも閉めた。



ずっと音楽を流さずにヘッドホンをつけている。



全ての事をシャットアウトしてとりあえず何もしたくない。



食欲なんてない。



あのコンクールで失敗した事は分かってる。



でも、悔しくない。



悲しくない。



ただ、ピアノから裏切られた気がするだけ。



でも別に喪失感何てものも感じない。



怒りも感じない。



ぼーっとしている。



たぶん寝ている事もないのかな。



いやずっと寝てるのかもな。



それすら分からないほどに、気を飛ばし、ただただぼーっとしている。



ずっと相棒だったピアノの椅子に座り、ピアノに体重をかけたまま。



最初はしびれていた体も、もうそんな事分からないくらいに感覚がなくなっている。



そのまま微睡みの間で再び気を飛ばした。



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