君色のソナチネ
ー純怜sideー
いつになったら弾けるようになるのかな…。
そう思いながら、みんなの演奏を聴いている。
あどけない子供達の笑顔に少しだけ元気がでてくる。
無条件に、お姉ちゃん大好き!って気持ちをぶつけてくる子供達の笑顔はきらきらと輝いていて…。
そんなとき、1人の女の子が駆け寄ってくる。
「お姉ちゃんっ!」
か、可愛い。
たしか、あかりちゃん。
「なあに?」
「きらきら星弾いてっ!」
「…へ?」
「モーツァルトのきらきら星!
去年お姉ちゃん弾いてくれるって約束したよ?」
あっ…。
確かに約束してた。
でも今の私には…。
''ごめんね、お姉ちゃん弾けなくなっちゃったの。''
そう口を開こうとしたとき。
「あかりちゃんだったよね?」
私の言葉を言わせないように入ってきたのは奏。
「あ、お兄ちゃんピアノの人ー!」
そういって笑顔を見せるあかりちゃんに奏は驚く事を言う。
「お兄ちゃんも、お姉ちゃんと一緒に弾いていいかな?」
あかりちゃんの元気なうんという返事を聞くや、私の腕は掴まれ引っ張られ、あっという間に椅子に座らされていた。
もう1つ椅子を運んできた奏は隣に並べて座る。
「…そ、そう?」
私弾けないよ…。
急に不安に襲われ奏の方をむく。
「お前は主題だけ弾いてろ。
後は俺が弾く。」
主題だけって…。
それでも無理だと訴えようとしたけれど、もう彼の手は鍵盤に乗っていて、子供達に向かって一緒に歌ってと言っているところだった。
迷う暇もなく鍵盤に手を乗せるけれど、震えていて使い物になるかどうかも分からない。
それでも、息を吸って合図をする彼を信じて久しぶりに頑張ろうと思えた。
イメージもテンポ感も全て伝わってくる彼の息遣いに導かれるように主題を弾きだしていた。