君色のソナチネ




あっちゃんがこの男に自己紹介を頼むと、その男は、敬語で顔に笑みを浮かべて自己紹介をし始めた。





うわ〜‼︎

本性隠したな〜‼︎

なんて私にはすぐに分かったんだけど、純怜は、信じてしまった様子。




ありゃりゃりゃりゃ〜。

なんて思ってると、その男が純怜に、




「俺におまえの演奏きかせろ‼︎」




と言ったんだわ…。

それには、私もびっくりせずにはいられなかった。



純怜はといえば、キョトンとしている。

まぁ、あの子ならそりゃそうか。

疑いつつも、きちんと敬語で返した。

偉いじゃないの。

でもその後、2、3回の言葉のラリーが続いたあと、




「んぁ?もう俺が決定したんだけど。」




その言葉に、痺れを切らしたのか、一気に捲し立てて言葉を放った純怜。

言葉を出し尽くした彼女は満足そうだった。




…でも…、




彼は、冷静に、純怜が反論できる余地を段々と無くしながら攻めていき、しまいにはうまく言いくるめてしまった。




しかも、からかいながら。







…なんていう早業。

あんなに男には強情になって、扱いずらい純怜をいとも簡単に言いくるめた。

しかも、スマートに。




純怜には悪いけど、かなり感動してしまった。




そして彼は、言いくるめられた後悔しそうに唇を噛んでいる彼女を、私たちにむけた表面だけの笑顔とは違う、優しくて深みのある笑顔で少しだけ見つめていた。



…あらら?嘘、そういうこと?



そんな彼を見て独りよがりかもしれないけれど私は、遂に純怜にも白馬の王子様が現れたのかもしれないと思った。

あっ、自分で言っておいてイタすぎるな、白馬の王子様って、、、笑。




まぁでも、現れたんだと確信めいた自信が何故か湧いてきたんだ。



神峰 奏という名の、

純怜にだけ俺様で、

自己中心的で、

でも優しくて、

そして、ピアノを弾く天才でもある、

そんな、純怜だけの白馬の王子様が…ね。





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