君色のソナチネ
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「奏、まって〜〜!!」
そう言いながら追いかけてくる純怜。
「遅いぞ!」
なんて言いながら歩を緩め、追いついてきた純怜の手を握り、再び歩き出す。
今日は昨日の演奏会で教会を使わさせていただいたお礼をしに教会へと足を運んでいる。
「あっ!」
「なんだ、急に叫びやがって。」
「奏、ちょっと屈んでくれる?」
「あ?なんで。」
「いいからいいからっ!」
教会の入り口近くまで来た時、変な事を言い出した純怜。
不思議に思いながらも言われた通りにすると、頭に伸びてくる彼女の手。
その華奢で白い手が何かをつかまえたらしい。
「ほらっ!」
あ…
「さくらか…?」
その手のひらに乗った桜の花びら。
俺たち2人の周りに桜の花びらが散っているのを見て、2人でその大木を見上げる。
「きれい…。」
「ああ。」
しばらく2人でその情景に浸る。
ふと純怜の方を見ると、目を輝かせて桜を見上げている。
「ふっ。」
「なぁに、何でわらってるのよ。」
「いやぁ。」
「何よ、言ってくれなきゃ気になるじゃん!」
「お前を見て昨日のお前の演奏を思い出したんだよ。」
「え?」
「桜色をまとった菫色のソナチネだった。」
「はー?なにそれ、意味わかんない。」
「イメージだよ、イメージ。」
「ますます分からないし。」
まぁ、分からなくてもいいさ。