君色のソナチネ
agitamentoー動揺ー
ー純怜sideー
ー-ー
「なんか、ちょっと意外だな…。」
「なにが?」
「うわぁっ!
もう、華菜、いたならそういってよね!」
びっくりするじゃないか!
「なによ、純怜のこと心配で見に来てあげたのよ。それで、なにが意外なの?」
「えっ?
…あぁ、あいつもあんな演奏するんだなぁ〜って思ったの。
もっと、こう、なんていうか…」
「もっと、冷たい演奏でもすると思ってた?
確かに、私も意外だと思ったわ。
まぁ、あいつも人間の子だったってことでしょ。」
「…うん。」
私たちは舞台袖で小声で喋っている。
いつもは心配なんかあんまりしない華菜が何故かきてくれた。
客席であいつの演奏聴いてくれてていいのになぁ。
なんて思うけれど、やっぱり親友が隣にいてくれていると、心強いかな。
でも、本当にさっきとは別人みたいだなぁ…。
さっきの俺様な態度とはまるで違う演奏。
正直に言うと、心打たれてます。
「私も人の演奏を聴いて感動できるんだなぁ。」
今まで誰の演奏を聴いても、感動まで至ることがなかったんだ。
自分で自分に驚いてます。
「なになに純怜〜もしかしてあいつに脈あり、とか〜?」
「っいや、そんな訳ないでしょっ!」
「な〜んだ。つまんないの〜。」
「ただ、…。」
「うん?」
「あっ、いやなんでもないの。」
「なによ〜‼︎
言ってくれてもいいじゃないの‼︎
私たちの仲だよ?」
「あ、うん…。
…なんか、今まで誰の演奏にもここまで心が動いたことがないからびっくりしてるの、自分に。
よく分からないけど、心がときめいたのは事実なんだ。
なんかあいつの演奏が、包んでくれるみたいに、凄く、すごく暖かくて、ック」
「ちょっと、純怜?」
華菜が心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「うわぁ、ごめんっ!」
私、知らないうちに涙流してたんだ。
「本当にあいつって訳わからない。」
そう呟いたけれど、一番訳わからないのは、あいつの演奏にここまで心を動かされている私だ。