君色のソナチネ






いざ、ピアノへ。


椅子の高さを調節して座る。


''ピアノさん、よろしくね。''


心の中で呟く。




うん、やっぱりピアノは落ち着く。

例え、舞台の上だったとしても、ピアノに向かうと、どんな雑念でも全て消え去る。







ピンとした緊張感がホールの隅々まで張り詰めている。




弾き手と聴き手、両者から生まれる、独特の緊張感。

緊張を共有している気がしてそれが逆に私を落ち着かせる。




目を閉じて、創り上げた曲のイメージを広げる。

聴いている人、一人一人の緊張感を媒介して、ホールの隅々まで音を届けるイメージで。

このホールを曲の世界で包み込むイメージで。





幾つものイメージを膨らませ続けると、ふと降りてくるいつもの感覚を感じ、それと同時に目を静かに開け、手を乗せる。








そして、そのまま、何かに導かれるように鍵盤に力を伝えたー-ー






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