君色のソナチネ
「ばあちゃん、じいちゃん、いってきまーす。」
今日もいつも通りに早めに家を出た私。
「ハァーーッ。」
息を吐くと、白くなる。
今年の冬は暖かいって先週のニュースでは言っていたけれど、今週になって急に冷え込んだ。
「うぅ、さぶっ!」
風が吹くと、寒くって寒くって、マフラーに顔をうめる。手には皮の手袋。これがあったかいんだよね。
因みに、お母さんのだったらしい。これが唯一の形見。
制服に皮の手袋は流石に合わないのかもしれないけれど、普通の毛糸の手袋だと、学校に着く頃には手がカチコチになっちゃうから、そこは我慢。
''冬''はピアノを弾く者にとって、本当にやっかいなのです。カイロは必需品で、毎日2個も持っていってるんだよ。
''ミニ''カイロだけじゃなくて、手をスッポリ包んでくれるくらいの大きさの''ビッグ''カイロなんてのがあったらいいのにな〜って思う。
つい、この間まで紅い衣を纏っていた街路樹たち。今は、葉を落とし、道を綺麗に染めている。裸になった木々は、なんだか寒そう。
冬って、もの寂しい雰囲気だから、自分が生まれた季節なのに、好きになれなかったけど、最近、こんな景色を見てたら悪くないなって思うようになった。
チュンチュン鳴いてた鳥達は大陸へと渡り、のほほんと自由に家の外と中を行き来してた飼い猫のタマは、コタツの中で丸まったりしてる。
木々も、動物達も、人間も、みんな一緒だね。
みんな寒いから、どうにかして暖かく冬を越そうと頑張ってる。
なんだか、そう考えると面白いなぁ。
そんなことを思いつつ、カサカサと落ち葉で音をたてながら、季節だけが移り変わった通学路を歩く。