君色のソナチネ
「では、今から文化祭へ向けて、第1回目の実行委員会議を行います。」
ザワザワしていた会議室も、静かになる。
「今回の文化祭実行委員長を務めさせていただきます、普通科、2年Aクラスの柏木 知香[kasiwagi chika]です。
何かと不手際もあるかと思いますが、これまでの空高の文化祭の中で、1番の文化祭にできるよう、精一杯やっていきます。
よろしくお願い致します。」
可愛い先輩だなぁ。しかも、Aクラスってことは、特進コースなんだ。頭、すごくいいんだろうな。
「副実行委員長を務める、音楽科2年、相園 星[aizono sei]だ。
最高の文化祭にしたいと思っている。
よろしく。」
相園先輩だ〜。
確か、ファンクラブ?っていうやつがあるらしいよ。
樹音が、わざわざ普通科の女の子達が見にくるんだって言ってた気がする。
自己紹介を聞いている限り、かなりクールそう。
「知香。」
相園先輩が、柏木先輩の名前よんで、アイコンタクトをとってる。
2人って仲いいのかな。
「では、2年の実行委員の皆さんから順番に自己紹介をお願いします。」
あっ、柏木先輩、それ言うの忘れてたんだ。
緊張してるのかな。
それにしても、自己紹介か…。なに喋ろう。
適当でいいかな。
…なんて思っていたんだけど、さっきの、柏木先輩や、相園先輩を始めとした、先輩達の自己紹介からは、並々ならぬ文化祭へ対する情熱とか、真剣さが伝わってきて…。
私も真剣にならなきゃ、責任もってやらなきゃ、そんな先輩達に失礼だよね。
この文化祭を、大成功させたいって、先輩達の輝く笑顔を見ていたら、そう思える。
「1年、音楽科の水姫 純怜です。
今まで正直、実行委員になったことが嫌で、適当にすればいいかなんて思っていました。
でも、先輩達の意気込みを聞いているうちに、私も先輩達と一緒に、文化祭を大成功させたいなって、思いました。
少しでも、先輩達の助けになるように、頑張ります。よろしくお願いします。」
…「「「よろしくね、純怜ちゃん‼︎」」」…
さっきまでの自分が恥ずかしくなるくらい、実行委員の皆さんは優しく私を受け入れてくれて…。
ふと横を見ると、神峰が驚いた顔をしたかと思うと、笑ってる…?
「えっ。」
馬鹿にするようないつもの笑いとは違う、その笑顔に胸が一瞬だけ苦しくなる。
何だか、心が少しあったかくなるような不思議な感覚。
なんなんだろう。
まぁ、いいか。
うん、私、実行委員がんばろう。