君色のソナチネ
「うげーー…、疲れたぁ。」
あの後、柏木先輩と相園先輩から、空高の文化祭についての説明があった。
「何でこんなに前々から準備しておかなきゃ間に合わないのか、分かった気がする。」
内容の濃さにはかなり驚かされた。
空高の文化祭、通称『空丘祭』。
1日目は、校内だけ。
2日目は一般にも公開されるらしい。
それで、1日目と2日目にそれぞれ、クラスから1つずつ出し物をしなきゃいけないらしいんだけど、その設定がまた本格的で…。
「1日目、音楽科は毎年やる事が決まってて、学年ごとに、ミュージカルを1作品、自分達で創作して演じるんだって。」
つまり、私たちの学年は8人だから、8人で1作品。
「2日目は、それぞれクラスごとに、お店をするんだって。」
ミュージカルも、お店も、自由に自分達で作らなきゃならない。
もうすでに弱音を吐きたくなる。
「なんだか、途方もなく感じるのは私だけなのかな…、華菜?」
''そうね、聞くところ、毎年ミュージカルにはそうとう骨が折れるらしいわよ。''
家に帰ってから、制服も脱がずにベッドに転び、華菜に電話してるんだ。
「だよね…。
でもね、華菜。私、頑張るよ‼︎先輩達と文化祭成功させるって、決めたんだ。」
''あら、興味ない事するのが嫌いな純怜が、やる気出すなんて、珍しいじゃないの。頑張ろうね!''
「まずは、色々と役割決めなきゃ‼︎
明日、神峰と話してみるね。」
''純怜、神峰君のこと、あんなに嫌ってたのに、話すようになったんだ。''
「あー、うん。なんだか慣れちゃったの。
あいつの言ってることは間違ってないしね。」
''ふぅーん、慣れちゃったんだ。へぇ〜。
まぁ、神峰くんと頑張って。
じゃあ、また明日ね。''
「うん、じゃあ…」
何だか、含み笑いされてた気がする…。
もう、気になる電話の切り方してくれちゃって!
「純怜ちゃん、ご飯できたわよ〜‼︎」
下からばあちゃんの声がする。
「はあぁーい‼︎今いくよー‼︎」
さっ、食べよたべよ。
考えても分かんない事は考えない。