君色のソナチネ
「純怜ちゃん、最近なんだか楽しそうにしてるわ。なにかあったの?」
ばあちゃんが作ってくれた、晩御飯。
お鍋の中に、豆腐、白菜、長ネギ、春菊、しらたき、肉だんご、それに牡蠣。
今日は牡蠣鍋だ‼︎
これでもかってくらいに、具がひしめき合って、グツグツ煮立っておいしそう。
コンタクト代わりにつけてる眼鏡を曇らせながら、美味しくパクパク食べていたとき、そんなことを言うばあちゃん。
うーん、むしろ、大変すぎるんだけどな…。
楽しそうに見えるのかな。
「まぁ、充実はしてるかな。」
「男かっ⁇
純怜、男なんだろっ⁇」
「むぐっ、コホッ、コホッ、
コホッ、そんなわけあるかーいっ‼︎」
じいちゃんが急にそんなこと言ってくるから、しらたきが変な方に入っていったじゃん。
「ほらほら、おじいさん、そんなに強引に聞かないであげてちょうだい。純怜に、素敵な男性がいるのなら、教えてくれるわよ。ね?純怜ちゃん。」
いやいやいやいや、
「ばあちゃん、じいちゃん、私に男なんていないからね、ありえないから。」
口ではそんなことを言っておきながら、本当にありえない。
さっきの、あいつの優しく笑っている顔が浮かんできたなんて。
最近、ずっと実行委員で一緒にいるからかな。
うん、絶対そうだ。
「たぶん、今楽しそうに見えるのは、私が文化祭の実行委員で忙しくしてるからじゃないかな。」
「そうなの。
文化祭の実行委員、頑張るのよ。
おじいさんと私もいくからね。」
「うん、頑張るよ。」
「それと純怜ちゃん、素敵な男の子ができたら紹介してね。ばあちゃん、楽しみにしてるわ。」
「だめだ、純怜。
男なんて作るんじゃないぞ。
連れてくるなよ。」
「まぁまぁ、おじいさん、純怜だって、もうそういう年頃ですよ。私たちにもあったではありませんか。」
「まぁそうだが…。
でも、やっぱりだめだ!」
なんで、私が彼氏つくる前提で二人は話してるんだろうか。私彼氏なんていらないんだけどな…。
なんて思いながらも、ばあちゃんとじいちゃんのやり取りが面白くって、笑って見ていた。