恋色シンフォニー


8月上旬の日曜日。
今日は三神くんと、例の設楽さんに頂いたチケットのコンサートを聴きに行く。

初めてのお出かけデート。

昨日の夜は三神くんがオケの打ち合わせがあったので、お泊まりはなし。お互いそれぞれの家で過ごして、朝に駅で待ち合わせた。

ゆうべはドキドキしてなかなか眠れなかった……というのは恥ずかしいので秘密にしておこう。
何歳だ、自分。

待ち合わせ場所に佇む、三神くんの姿は、そこだけスポットライトが当たっているかのように、浮き上がって見える。
……恋って面白い。

初めて見る、よそ行きの三神くんの私服姿。

ベージュの半袖シャツに、草色の麻素材の薄いベスト。
焦げ茶色の、シルエットがきれいな細身のパンツ。

どことなく上品で、育ちがいいんだなと感じてしまう。

メガネはしていない。

うん、やっぱり、会社ではメガネでいいです。
素顔がこんなにカッコいいと知っているのは私だけでいいです。
素顔でいられて、ドキドキして仕事に支障が出るのは困ります。

動揺しながら近づくと、気づいて、微笑んでくれる。

ああもう。
心臓うるさい。
頬、勝手に緩まない。

「お待たせ」

「かわいい格好。お洒落してきてくれて、うれしい」

こういうことを、サラッと言えちゃうんだよね。

「……ありがと」

すごくうれしい。
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