恋色シンフォニー


それから土日を挟んで週明けの月曜日。
午後3時半、会議前、休憩室でひとりコーヒーを飲む。
休憩室は給湯室と一緒になっているので、マイカップにインスタントコーヒーと砂糖とミルクを入れて飲むのが、内勤の時の習慣。

と、そこへ、
「お疲れ様」
と三神くんがやってきた。

げ。気分悪い。

タンブラーにティーバッグを入れ、お湯を注いでいる。
腕時計を見ながら時間をはかり、ティーバッグを取り出した。
タンブラーの蓋をしめると、こちらに歩いてくる……

私は“こっち来るな”オーラを出しつつ、
高く分厚い壁を構築する。

しかし。

げげ。

私の正面の席に座った。

他のテーブルも空いてますけど。

「これ、橘さんに。
このまえ、怒らせちゃったお詫び」

三神くんは、私の壁を溶かすような明るく穏やかなオーラを醸し出しつつ、そう言って、机の上に、一枚のチケットとチラシを置いた。

地元の市民オーケストラによる定期演奏会のチケット。

「チケットあげる。 僕は行けないから」

曲は……

リムスキー=コルサコフ『シェヘラザード』
サン=サーンス 『交響曲第3番 オルガン付き』
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