恋色シンフォニー
「じゃあ、せめて、ほっぺたならいいでしょ。あいつにさせたんだから」

……そう言われると。断れない。

「……唇以外でお願いします」

ふふっと笑った気配がして、頬、まぶた、額、鼻……顔中にキスの雨が降ってきた。

「しすぎっ! しすぎだから!」

慌てて三神くんを押しのけ、距離をとる。

「えー、全然足りない。けど、綾乃の言う通り、唇にしてたら抑えがきかなくて押し倒してるかもしれないから、しなくて正解かも」

……相変わらず、ストレート。

「今週末の土日は、オケの合宿があるんだ。それが終わったら、夜、綾乃の家に行くから、そこで話そう?」

「……うん」

「じゃあ、僕より楽器の心配したペナルティその1で、ごはん作って待ってて?」

「……了解」

「その2は、僕を泊めること」

「……次の日仕事だけど」

「うん。だから合宿終わったらそのまま行く。ごはん食べながら話をして、お風呂に入って、それからゆっくり、いっぱいしよ?」

……爽やかな笑顔で何て恥ずかしいことを言うんだ。

「私の話きいたら、そんなことする気が起こらないかもしれないよ?」
照れ隠しに、言ってみる。

「それはない。綾乃が何を言っても受け入れる覚悟はできてるし、綾乃を手放す気はないから」

……すごいことをさらっと言うのね。

じんとして動けないじゃないの。



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