恋色シンフォニー
11
翌日木曜日。
昨日あんなことになって会社に戻れなかったので、午前中は予定を変更して、内勤にした。
書類の山をさばいていき、ひと息ついたところ。
視界の端に三神くんがタンブラーを持ち、立ち上がった姿が映った。
私も久しぶりにさりげなく後を追う。
休憩室でひとり、気だるげにコーヒーを淹れている三神くん。
ああ。やっぱり愛おしい、と思う。
「お疲れ様」
と言いながら、休憩室に入ると、三神くんが私を見て、微笑みながら、
「お疲れ様」
と言った。
頬が緩んでしまう。
この笑顔が大好きなんだと思い知る。
でも、久しぶりに明るいところで三神くんの顔をちゃんと見ると、目の下のクマがひどい。
……自分を殴ってやりたい。
何をやってたんだ、私は。
こんなになるまで彼氏のことほっといて。
「最近ちゃんと寝てた?」
「それはこっちのセリフ。メイク濃いよ」
「失礼な」
「ああ、そういえば望月さんが最近綺麗になったって評判。橘さんがカウンセリングしたんだって?」
「うん。それはよかった。販売員冥利につきます」
三神くんが笑ってくれた。