恋色シンフォニー
うれしい。
バカみたいに、うれしい。
好きな人が笑ってくれるのって、こんなにうれしかったっけ。

こういうちょっとした会話にさえ幸せを感じるのは喧嘩の後のメリットだよね……と久々の甘い雰囲気に浸っていると。

「やっほー、綾乃に三神っち」

百合が入ってきた。
このお邪魔虫!

「ちょっと綾乃、今月のあんたのフロア退出警備キーのセット時刻、毎日毎日遅すぎだから!」

ちょっと、この場で何てこと言うのよ!

「へえ。具体的には?」

ほら、三神くんの声が低くなったじゃないの!

「言っちゃダメ!」
「何で? 聞かれるとまずいような時刻なわけ?」
「そりゃー穏やかじゃない時刻だわね。総務部長に言いつけようかと悩むくらいに」
「やめてよ! 今日からは早く帰ります!」

私の悲鳴のような声をきいて、三神くんがおかしそうに笑った。



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