恋色シンフォニー


玄関の鍵が開く音がした。
「ただいまー」
圭太郎の声。

私は玄関で出迎えた。
ヴァイオリンケースを肩にかけ、大量の花束が入った紙袋を下げている。

「お帰りなさい」

圭太郎は私を見て嬉しそうに微笑んだ。
胸がきゅっとなる。

圭太郎は廊下に紙袋とヴァイオリンケースをそっと置いてから、私の前に立ち、もう一度、
「ただいま」
と言った。

私ももう一度、「お帰りなさい」を言う。

圭太郎は泣きそうな顔をして、私を抱き締めた。

「綾乃……」

涙声だったから、泣いてるのかもしれない。
私はそっと背中をなでた。
押しつぶされそうなプレッシャーをはねのけた、強い人。

「お疲れさまでした。すごかったよ。がんばったね」

「……幸せすぎて、泣ける」

もう。
かわいい。
かわいすぎる。
< 209 / 227 >

この作品をシェア

pagetop