恋色シンフォニー
廊下で、圭太郎が待っていてくれた。
並んで、階段を降りる。
「今日のメニューとリクエストは決まってる?」
金曜日、早く帰れる日は私が晩御飯を作り、圭太郎が私のリクエスト曲を弾いてくれることになっていた。
「麻婆豆腐と、ブラ1の2楽章ヴァイオリンソロ」
「……いいの?」
「リハビリ。圭太郎のソロなら、聴けると思う」
「そう? 無理することないよ?」
「うん。でも、老後に弾けるようになるには、今からリハビリしておこうと思って」
「そういえば、マリと老後に一緒に弾く約束したんだって?」
「うん」
「ずるい」
「え?」
「彼女とだけ約束してずるい」
「はっ?」
「僕とそんな話したことないのに、ずるい」
そこ⁉︎