恋色シンフォニー



24時間たっても、音楽はまだ私の身体の中を駆け巡っている。

そういえば。
三神くんは、何で私にチケットを渡したんだろうか?

私がオルガン付き、好きだってわかったから?

それにしてもグッドタイミングすぎる。


「橘さんはいかがですか?」
突然話を振られる。
進行役の三神くんが澄ました顔で私を見ている。
やばい。会議中なのに、話聞いてなかった。

「橘さんの部門はいかがですか?」

おのれ……。
隣の渚ちゃんにこっそり聞こうとしたとき。
「橘さんの部門の新製品の欠品状況を説明してください」
三神くんがご丁寧に繰り返してくれた。

「はい、○社の口紅とアイカラーのモデル色が一時的に品薄となり……」

私が発言を始めると、三神くんが下を向いた。笑いをこらえているな、こいつ。

おのれ……こんの腹黒コンマス!



「会議中は話を聞いていてくださいね、橘さん」
会議室を出ようとする時、三神くんが話しかけてきた。

「誰のせいだと思ってるのよ」

にらむと、
ふっ、と三神くんが笑いを浮かべた。
今まで見たことがない、黒い微笑み。

瞳がキラリと輝いた。

空気がガラリと変わる。

……まるで、シェヘラザードを弾いていた時のような、色っぽい雰囲気。

「ふぅん。僕のせい? そんなに、よかった?」

……な、な、何てこと言うの。

ちょっと、落ち着いてよ、私の心臓。
こら、顔、赤くならないでよ。

「こ、この……からかって……! みんなにばらしてやるからね!」

「橘さんの趣味もばれてよければ、どうぞ」

やっぱり、腹黒い!

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