恋色シンフォニー
♫
24時間たっても、音楽はまだ私の身体の中を駆け巡っている。
そういえば。
三神くんは、何で私にチケットを渡したんだろうか?
私がオルガン付き、好きだってわかったから?
それにしてもグッドタイミングすぎる。
「橘さんはいかがですか?」
突然話を振られる。
進行役の三神くんが澄ました顔で私を見ている。
やばい。会議中なのに、話聞いてなかった。
「橘さんの部門はいかがですか?」
おのれ……。
隣の渚ちゃんにこっそり聞こうとしたとき。
「橘さんの部門の新製品の欠品状況を説明してください」
三神くんがご丁寧に繰り返してくれた。
「はい、○社の口紅とアイカラーのモデル色が一時的に品薄となり……」
私が発言を始めると、三神くんが下を向いた。笑いをこらえているな、こいつ。
おのれ……こんの腹黒コンマス!
♫
「会議中は話を聞いていてくださいね、橘さん」
会議室を出ようとする時、三神くんが話しかけてきた。
「誰のせいだと思ってるのよ」
にらむと、
ふっ、と三神くんが笑いを浮かべた。
今まで見たことがない、黒い微笑み。
瞳がキラリと輝いた。
空気がガラリと変わる。
……まるで、シェヘラザードを弾いていた時のような、色っぽい雰囲気。
「ふぅん。僕のせい? そんなに、よかった?」
……な、な、何てこと言うの。
ちょっと、落ち着いてよ、私の心臓。
こら、顔、赤くならないでよ。
「こ、この……からかって……! みんなにばらしてやるからね!」
「橘さんの趣味もばれてよければ、どうぞ」
やっぱり、腹黒い!