恋色シンフォニー
6
翌々日、月曜日。
出勤すると、いつも通り三神くんはすでに仕事を始めていて。
私も、いつも通り慌ただしく仕事をこなしていく。
10時少し前。
緊急の用件を終わらせ、ほっと一息ついたところで、視界の隅に、三神くんがタンブラーを手にフロアを出ていく姿が映った。
……週末のこと、改めてお詫びとお礼と報告はすべきよね。社会人としては。
やっぱり三神くんは休憩室でお茶をいれていた。
幸い、他には誰もいない。
「お疲れ様」
「ああ、お疲れ様」
三神くんがタンブラーを手に、椅子へと向かい、腰を下ろした。
私は立ったまま、
「この間はご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
と、深々と頭を下げる。
「あのあと、ちゃんと送ったって、あいつから電話あったけど……」
もう、前みたいな壁は感じない。
普通に話せる。
「あ、そうなんだ」
「変なことされなかった?」
変なこと……。
ほっぺにちゅーされましたが……。
とは言えない。
「あいつ、女癖悪いからさ、……その……」
「なるほど、わかるな〜。ヴァイオリンも、色っぽい演奏するもんね〜」
少し話題をそらす。
「え。あいつの演奏聴いたの?」
予想外に焦った声だったので、思わず顔を見てしまった。
驚きと焦り。
初めて見る表情に、また心臓がどきりとする。
「CD聞かせてもらったけど……」
「あいつ……」
三神くんは、思いっきり顔をしかめた。
あ。そんな顔、私に見せてくれるんだ。
ちょっと、いや、かなりうれしい……って、違う違う。