恋色シンフォニー



その日の夕方の販促会議を終え、会議室を出ようとすると、三神くんに呼び止められた。
「橘さん、この間のことだけど」

はい? 何か仕事で保留事項があったっけ?
考えているうちに、他の人はみんな部屋を出て行き、2人きりになってしまった。

「ごめん、何だっけ?」

思い出せず、素直にきくと、三神くんは会社で見せたことがない、黒い笑顔を浮かべた。

「まさか、土下座して終わりじゃないよね?」

こいつ‼︎
だんだん本性あらわしてきたな!

「何をしてもらおうかなぁ」
三神くんは、うれしそうに、歌うように言った。

「とりあえず、ごはん、行こうか?」



「6回って計算おかしくない?」

「1.酔ってからまれた。
2.車で送った。
3.家に泊めた。
4.朝ごはんごちそうした。
5.僕の練習きかれた。
プラスアルファで、6回」

三神くんの要求は、6回、私が食事をご馳走すること。

真面目な私は、あの後仕事を超特急で終わらせ、ただいま三神くんを車に乗せて、きちんと食事に向かっている。
なんでも、三神くんが行きたいお店があるそうで。
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